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名古屋地方裁判所 昭和42年(行ウ)36号 決定 1970年6月22日

名古屋市昭和区円上町一丁目十六番地

原告

風岡利勝

右訴訟代理人弁護士

藤井繁

阪本貞一

名古屋市瑞穂区西藤塚一丁目四番地

被告

昭和税務署長

名古屋市中区南外堀町六丁目一番地

被告

名古屋国税局長

右当事者間の昭和四二年行ウ第三六号更正処分等取消訴訟事件につき原告代理人阪本貞一より文書提出命令の申立があつたので次のとおり決定する。

主文

本件申立を却下する。

理由

原告代理人阪本貞一は文書の趣旨本件更正処分の根拠を示すもの、文書の所持者被告、証すべき事実本件更正処分が何等根拠のない事実、文書提出の義務の原因民事訴訟法第三百十二条第二、第三号、文書を原処分庁が本件処分決定を理由づけた証拠書類一切と表示して同文書の提出の申立をなした。

案ずると行政不服審査法第三十三条第一項は処分庁は、当該処分の理由となつた事実を証する書類その他の物件を審査庁に提出することができる。と規定し、同条第二項は審査請求人又は参加人は、審査庁に対し、処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができる。この場合において、審査庁は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。と規定している。しかるに審査請求はその棄却の裁決により審査の段階を一応終了して審査庁の手を離れておる外審査庁たる被告名古屋国税局長に対する本訴は行政事件訴訟法第十条第二項により同被告の指摘する瑕疵を存する疑点を存し、同被告を外にして処分庁たる被告昭和税務署長に対し同記閲覧権を有する旨の規定もなく、更には右文書を所持する者も定かではなく、該文書も具体的に指摘されていない。又被告が所持し、本件更正処分の根拠を示し同処分決定を理由づけた証拠書類一切の文書により右更正処分が何等根拠のない事実を証するという原告の申立理由には矛盾を感ぜしめるものがあり、かかる文書があるとしてもそれは挙証者たる原告の利益のために作成せられたものとは言い難く、しかも同文書は挙証者と文書の所持者との間の法律関係に付作成せられたものではなくこれは右処分庁が原告の確定申告の当否の調査資料として一方的に自己使用のために作成したものであるので、原告の本文書提出命令の申立はいずれの点よりするも理由のないことが明らかであるからこれを却下する。

(判事 小沢三朗)

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